ブランド
先日三重県の松阪市に牛飼いの仲間で視察に行きました。

松阪牛は言わずと知れた日本一の牛肉ブランド。
但馬牛はその松阪牛の素牛でもあります。

視察を終え、仲間で飲んでいるときに「ブランドとは?」と言う話になりました。

先人から引き継いだ但馬牛というブランド。
これを守っていかなくてはいけないと。

確かにその通りだと思います。
僕が今牛飼いで生活しているのは先人が残してくれた但馬牛があったからです。
新規就農だろうが後継ぎだろうがおんなじこと。
先人の基盤で飯を食べている。
「ありがたいなあ」って思います。
その上で自分にどんな価値が提供できるかなのだと思う。


ブランドとは価値を提供し続けること。


でも、○○牛とかってたくさんのブランドがあるけれど、そもそも国産牛の、和牛の、但馬牛の、○○牛の、それぞれの「価値」って何なんだろう?
それがわからないでブランドを守るって言っても、守るべきものも分からない。
つくるべきものも分からない。

僕ら繁殖農家は当然直接の購買者である肥育農家の求める牛を生産しなくてはいけません。
でも、そのほかにだって肉屋、消費者、未来の食生活・・・僕らが牛を飼っていく上で見るべき視点はたくさんあるはず。

そういった話は売り上げと関係なく見えるし、曖昧だから牛飼い同士ですることはない。

繁殖・肥育・肉屋・行政・農協・餌屋・製薬会社・共済・家畜商等々立場は色々ある。
目の前のお客も仕事内容もそれぞれ違う。
でも僕はどのラインでかかわっている人も但馬牛というブランドを守る最前線なんだと思う。
だからバラバラじゃなくってみんなで自分のブランドの意味を立場に関係なく語れるようにしたい。


僕が飼育しているのは但馬牛(たじまうし)という牛。
日本の宝だと思っています。

日本で「和牛」と呼ばれているなかで90%以上を占めるのが「黒毛和種」という品種。
その黒毛和種には大きく3つの「系統」があります。
しかし実際は3つの系統の間で全国的に交配が進められ、純粋の系統はほとんど存在しません。

そんな中、兵庫県の但馬牛は「閉鎖育種」と言って他の県の牛の血液を一切入れない改良を続けており、結果純粋種が守られています。
さらに兵庫県でも僕の住む美方郡は厳しく、郡内での閉鎖育種をしているので非常に濃い血縁を持った但馬牛の集団になっています。
全国的に同じような血統構成の中、遺伝的に特徴のある但馬牛の必要性は言うまでもありません。

この但馬牛、もともとは農耕用に用いられており、昔から但馬地域は子牛を生産する繁殖地帯でした。
そこで生まれた子牛を素牛として松阪牛や、神戸ビーフ、近江牛、飛騨牛などのブランド牛がつくられていったんです。

1991年に牛肉の自由化がスタート。
安価なアメリカ産の牛肉との差別化のため霜降りの良く入る但馬牛が重宝され全国へその血液が流れて行きました。
その結果、現在はほとんどの黒毛和種には但馬牛の血液が入りました。
まさに『但馬牛の天下』といった時代があったそうです。

今の和牛の素となる牛。
それが但馬牛です。

しかし牛の場合トキのように保護していく対象でありません。
経済動物です。
経済動物とは「求められるもの」であり続けないといけない。


牛肉自由化以降、全国で和牛の改良が進み、閉鎖育種にこだわった但馬牛は霜降りでも増体でも大きく他県の牛に差をつけられる結果となりました。
以前は全国からの購買があった但馬牛も今は購買者のほとんどが兵庫県内の肥育農家です。
これは全国的にも非常に異例なんです。

こういった背景には兵庫県のブランドである神戸ビーフが兵庫県産の但馬牛を素牛としなくてはいけないという規約があるというのもあります。
しかし、見方を変えれば他県の肥育農家にとって但馬牛は魅力のない牛ともいえます。

松阪牛も現在9800頭近くいる中で但馬牛は700頭だそうです。
肉量も取れず、霜降りの派手さのない但馬牛は飼いにくく儲かりにくいのです。

もちろん但馬牛がダメということではありません。
但馬牛は他の牛に比べ脂肪の融点が低く、美味しいという試験結果も出ています。
実際僕も他県産の牛と食べ比べて香りや味が違うと感じることがあります。

遺伝的にも日本の和牛の改良の素として必要だとも思います。

長年の歴史があっての但馬牛というブランド。
良くわかります。

でも、ブランドって単なる歴史の長さじゃないと思う。

僕の友人で一般的に単価の安いホルスタインの肉をたくさんの消費者におなかいっぱい牛肉を食べてもらいたいと、自分でブランドを立ち上げ販売している方がいます。

島根で会社を興し、異端児と言われながら放牧のみで牛乳生産している仲間もいます。

彼らに共通しているのは『何が提供できるか』を考え続けているということ。

単価の高い肉が素晴らしく、安い肉はダメだなんてことはありません。
必要とされるからそれぞれに存在意義がある。
どんな業界でも価値を提供し続けるしか生き残れない。

守ってくれるブランドなんてありません。
みんな作り続けています。

但馬牛を飼っているから
ブランドを守っている。
ブランドを作っている。
それも間違ってはいない。

でも、それ以上にブランドに守ってもらっているだけなんじゃないの。

「味のわからない消費者が増えた。」
「景気が悪いから。」
ついつい言っちゃう。
ちゃうやろ。

価値を感じないから売れないだけ。


歴史の大きさは一朝一夕では得られない。
守らねばいけないものもある
但馬牛は残すべき牛だと思う。
閉鎖育種も続けていく必要がある。

でも、肉を売って、外に出て、たくさんの方と話してきたから思う。
『何を見るのか、誰を見るのか。』ってこと
子牛の発育や血統や技術論は目的じゃないってこと。


牛肉業界は冷え冷えです。
全く笑えません。

だから今、「ブランドってなんだ?」って生産者各々が考えないといけない。
「牛肉ってどうやってつくられてるの?」って消費者が勉強しなきゃいけない。
曖昧だから風評被害になる。

せっかくの但馬牛という宝。
どう守っていくのか。
そのためにどう喜んでいただくのか。
考え続けたいと思います。
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Top▲ | by beefcattle | 2011-08-06 02:49 |
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