命ってなんなんだろう?
生きるってどういうことなんだろう?

「思春期か!」って突っ込まないでください(笑)

先日DVDで「おくりびと」を見ました。
改めていい映画だなあと思いました。

僕らは牛を飼ってきて、たくさんの死に出会った。
それ以上に、たくさんの誕生にも出会った。

我が家では99%人工授精(1%は受精卵移植)で子牛を産ませます。
自分が飼っている母牛に、その時代にあった「雄牛の種」を、つける。

受精卵にしても精子にしても顕微鏡で見えるくらいの大きさです。
そこからは牛の姿なんて想像もつかない。

でも、種付けをするときは生まれてくる牛の姿を想像して種を選ぶ。
生まれるまでの母体内でのプロセス、命の意味など、深いことは考えない。
考えてもきりがないから、ただ時代にあった種をつける。
そして子牛を「産ませる」

元気な子牛を「産ませる」為に、母牛の管理が重要になる。
定期的なビタミンの給与、運動できるスペースがある時は運動、削蹄。
蚊が運んでくる子牛に奇形をもたらすウイルスに対する異常産ワクチンや
自然界にいる寄生虫による弊害をなくすための駆虫。
ストレスの軽減、環境の改善、餌の管理。
特に分娩2か月前の餌の管理は子牛の体が大きくなる時期なのでタンパクを多めに与える。
子牛が生みやすい産室を作り、逆子などがないか確認し、分娩の経過を見守る。
時には助産する。
そして子牛を「産ませる」

深くは考えない。

でも、あの【小さなまん丸の牛の形なんて全然していない受精卵】から【自分で立ちあがる子牛】として出てくるまでの過程を、本当に僕らが行っているんだろうか?

人工授精すると決めるのも、つける種を決めるのも、母牛として残すと決めるのも自分。
だからつい「産ませる」なんて言ってしまう。

別に命を軽んじてるわけじゃない、言っちゃ悪いが一般の人が思っている以上に牛飼いは牛が好きだ。
好きだから大事に飼うし、大事に飼うからいい牛になるし、いい牛になるからお金も入る。
機械的に生産してるように見えるかもしれないけど。
みんな牛が好き。

僕らはよく「産ませる」と表現するが、「産ませる」いうよりは「産んでくれる母牛をサポートする」という方が自分の仕事内容としては適切な表現だなと思う。

だって受精卵を、30キロ近い子牛にまで、母牛の力なしに育て上げる自信は僕には全くない。

母の力はすごい!!

ただ、僕は母牛の力の他に、命の誕生にはもっと大きな『意思』みたいなものを感じる。
「生きたい!」っていう意思。
意識ではなくって意思。

妄想かもしれないけど、おなかの中の受精卵からの、あの成長や変化は「意思」なしにはありえないって。。。。

あんまし書くと変な人に思われそうだ。十分自覚してるけど。。。(笑)


先日、ドラえもんの「のびたの日本誕生」というDVDを見た。
ドラえもんが7億年前の日本に行き
「ここには友達が少ないからペットを作ろうと思う。この卵につくりたい動物の注射を入れれば簡単に作れるから、のびた君でもできるよ。」と言った。
のびた君は卵に馬と白鳥のアンプルを注入してペガサスを作ったりするんだけど、ドラえもんが様子を見に来て慌てて隠すんだ。
そしてドラえもんは「のびた君、まだペット作ってないの?簡単にできるんだから早くしてよね!あ、あとこの餌を食べさせたら食べさせた分だけ大きくなるから。」と言って帰っちゃう。

まあ、ドラえもんの道具に突っ込みを入れる気はないんだけど、
「命を簡単に作る道具」これにものすごく違和感を感じた。


考えれば考えるほど命っていうのはわけわからん。


僕も元々は、まん丸な顕微鏡で見なきゃわかんないような受精卵。

だったんだよな?

全然覚えていないや。

今は僕の意思で生きていると思っているけど、受精卵の時に僕も意思が当たんだろうか?
脳もまだない時。
でも、何億、何兆という生物がおんなじように生まれてくる。
当たり前のように。

1年弱で牛も人も受精卵から人として、牛として生まれてくる。
驚異的な成長スピードだ。
たった10ヶ月で!!

そして何故か、例外なくみんな死ぬ。

生きている時間の体の変化はゆっくりだが、死んだ瞬間からの経過は驚くほど早い。

夏場に牛が死ぬと半日もしないうちに死臭がする。
死後硬直し、塊になる。
夏場であっても体は冷たく感じる。

死ぬのがわかっている牛も、生きている時は温かい。
牛の匂いがする。

余談だが、屠畜して枝肉になった牛は、お肉というか脂と言うか食品としての香りがする。
死臭なんて全くない。
だから、職人さんたちの技で、あっという間に解体され枝肉にされるのを見て、
『牛は死ぬけれど肉として生きている』といった感じがする。


受精卵からの神がかった成長スピード。
生まれ出てからのの時間のゆったりとした流れ方。
そして死んでからの異常なスピードの速さ。

生命の誕生が単なる偶然とは僕には思えない。
生きているってことはどこに向かうんだろう。。。

まあ、こんなことはブッダに任せて、僕はここらで止めて、それ以上深く考えはしない。
考えすぎても答えなんかその都度変わるから。


ただ、動いているってこと、生きているってことは綺麗だなあって思うようになった。

僕はお肉を販売する時に、牛のプロフィールを載せる。
これはお肉の付加価値としてつけているわけじゃなく、「いただきます」という道徳的なことを強要したいわけでもない。

僕だって死ぬ。
200年もしたら誰も僕のことなんて知らない。
子孫であっても。
そんなもんだ。

でも僕がいたことは事実で、それは見えなくれも絶対に残る。
それでいい。

200年後の子孫なんてイメージできない。
イメージできないから「大切にしたい!」っていう思うも強くはない。

でも、今、この瞬間に一緒に生きてて、関わりを持った人や牛はリアルだ。
これがリアル。今、僕の生きている瞬間のリアル。

だから大事にしたい。
お客さん一人一人。
友達一人一人。
我が家の牛1頭1頭。
家族ひとりひとり。。。

大事なんだ全部。

だから自分の牛がどこでどうなったのか知りたいし、
買っていただいた方ともつながりたいし、
喜んでもらいたいし、
食べる牛のことも知ってもらいたい。

『命は大事!!感謝しようぜ!!』を伝えたいんじゃない。

あなたが僕にとって大切な人、この子は僕にとって大事な牛。

それをお肉販売という形で伝えているんだ。

「ふくさと」は僕の大事な牛。
「としこ」は妻の一番好きだった牛。

今、何のために生きて、命はどこに向かうのか。
そんなことはその都度、考えたいときに考えてりゃいい。

リアルとは「今」。
大事なことを大事にしたい。

それが自分を大事にするってことだと思う。

それが命を大事にするってことだと今は思う。

「いただきます!」「命に感謝!!」という言葉は僕にはまだ上手く使いこなせないや。


大事に思うこと、それを大事にすること。

それでいいんじゃないって思うこの頃です。

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Top▲ | by beefcattle | 2012-02-09 10:50 | 日記
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