放牧牛肉(グラスフェッド・但馬牛) 「夢」 その4(屠畜&牛肉編①)
2012.11.22
夢を屠畜する日がやってきました。
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夢は終始怯えっぱなし。
同じ日に屠畜した「みつこ」は本当に最後の最後までトコトコとついてきてくれたんだけど、夢は頑として動かない。
どうしようもないのでウインチで引っ張り、屠畜する事になりました。
どこまでも、最後の最後まで夢らしかったです。
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ピストルで打って、放血すると、あとはもう肉の世界です。
頭を落とし、後脚にチェーンを掛け、つり下げ、解体用の台にお腹を上にして下ろします。
その後、皮をはいでいきます。
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皮を剥ぐ前に屠夫さんが胸を開けて見せてくれ、「放牧なのにええ脂が入ってるな~。」と言って下さいました。
確かに。。。こんなに脂が入っているとは思いもしませんでした。
10分前までは「夢」に気持ちが向いていたのに、気持ちはもう食べたくなっている。
おいしそうです。
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再度吊りあげて、内臓を取り出します。内臓は即洗い場へ。
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あれよあれよという間に枝肉になっていきます。
写真左側が夢、右は理想肥育の黒毛和種。
肉付きは明らかに違いますが骨格は負けてません。
あともう1年飼って、平坦な放牧場で栄養価の高い時期の草をしっかり食べさせ、9月初旬くらいに割れば、もっと肉付きが良かった気がしています。
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背中の皮下脂肪を拡大してみると、夢の脂はこんな感じで若干バター色で黄色がかっています。
正直な感想としてはもっと黄色いものだと思っていました。屠場の方も「思ったほど黄色くないな」って言っておられました。
脂が黄色いと見てくれが悪いので枝肉市場では安くなりますが、うちは小売りまでしているので関係ありません。
むしろ黄色い方が僕は好みです。
脂の黄色さで言えば、放牧敬産牛の方が黄色かったです。
年齢による蓄積もあるのかな?
とにかく美味しそう。
ちなみに黄色いのは青草の中に含まれるカロチンです。
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理想肥育だと脂肪の色はこんな感じ
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背割して、枝肉を半丸にします。
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モモ
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バラ
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手前が夢、枝肉にして294kgでした!!!
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ちなみに但馬牛の去勢を普通に肥育して枝で420kgくらい。
そういう意味では軽いともとれる。(比べるもんじゃないんだろけど。。。)
でも、完全なグラスフェッドの但馬牛で300kg弱の枝肉になるとは想像すらしませんでした。
僕の想像をはるかに超えてくれた牛でした。

夢が枝肉になるのと同時並行で、洗い場ではホルモンの荒洗いが行われています。
8:54に屠畜し、全ての工程が終わったのが10:04、時間にして1時間の出来事でした。

枝肉とホルモンを屠場の冷蔵庫に入れ、一旦家に帰って牛飼いです。
ホルモンはその日に家に持って帰って洗い直すのですが、BSEの検査があるためすぐには持って帰る事が出来ません。
16:00に再び屠場に行き、ホルモンをすべて持ち帰りました。

今回は「夢」「みつこ」2頭分のホルモン洗い&トリミングです。

最初は簡単なものから
タンです。
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皮を包丁で引っ張るように剥いて、ブロックにします。
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早速、ホルモン洗いを中断して試食。
ぶ厚く切った塩タン。
甘みと香ばしみがあって、ぶ厚いのに歯切れがいい!!
美味すぎ!!!!
ああ、でも売り物なのであんまし食べちゃいかんいかん。
と言いつつもう1枚。。。美味い。

レバーです。
肝臓廃棄とは無縁のプリプリのレバー。
負担がかかっていない飼い方なので元気そのものです。
ちなみに『放牧敬産牛』では肝臓廃棄が出たりします。
肝臓廃棄=穀物多給による負荷。と言い切るのは短絡的な発想で、
毎年お産を繰り返すことも、かなりの負担を強いているんだなと思ったりします。

グラスフェッドのお肉は香ばしみがあるのですが、内臓は青草の臭みが強くでる気がしています。
その中でも特にレバーは青臭いです。
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【タン、ツラミ、テール、アキレス】などの肉や筋の部分と、【ハツ(心臓)、レバー】という赤物は、胃や腸と違い構造がシンプルです。
また、消化物に触れていないので洗いやすいのです。
1つ1つを写真にとろうと思いましたが、ホルモンはスピード命なので撮っている暇がありませんでした。
全てを流水で洗った後、オゾン水で再度洗い、小分けに切り、真空パックして冷凍していきます。

簡単な部分が終わると、いよいよ難関の消化器官。
腸と胃袋です!!!

大腸は荒洗いの段階でこんな感じ。すでに開いてあります。
上側が内側、糞が通る部分です。黄土色の部分がぬめりで、汚れになります。
一方、まな板に面している方が大腸の外側。この部分に脂が巻いています。
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洗い場が狭いので、こうやってまな板を傾けて流水の中で包丁を使ってぬめりを落としていきます。
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綺麗になってきました。
大腸は分厚くて短いので、洗いやすい消化器官です。
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ぬめりナンバーワンのアカセン。
洗えども洗えどもヒダヒダの数が多くってとれません。。。
後で聞くと、「取れへん取れへん。ここはぬめりも楽しむとこやからサッと洗ったらいいんや」と言われました。。。
1時間くらい洗ったのに・・・
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以前も書きましたが、このホルモン洗いやトリミングの時は「夢」であることはほとんど意識していません。
ただひたすら鮮度を落とさないように、汚れをしっかりとるように、水気を切って適正に真空パックできるように。ただそれだけしか頭にはありません。

小腸です。
白い部分が外側の脂肪、黄土色にみえる部分が内側の部分です。
この小腸がとにかく長いのです。
そして薄い。
くねくねくねくねと曲線になっている小腸を脂肪がガチッと包んでいる感じ。
引っ張ると脂肪がブチブチと切れて、くねくねしていた腸がびよよ~ンと伸びてきます。
5cmくらい包丁で削ぐと裏面の脂に引っかかって腸壁がくるっとまわる。
また元に戻して5cm削ぐ。そしてまたくるっとまわっちゃうので元に戻して。。。。
やれどもやれども終わりません。
結構頑張っているのに、何故???
後で知ったのですが牛の小腸は40mくらいあるそうで、2頭分なので80m。
そりゃ4時間も5時間もかかります。。。
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綺麗になりました!!!
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ホルモンの処理をしている間は、あらかじめ冷凍庫でつくっておいた大量のバケツ氷を使って冷やしています。
何度も氷水を入れ変えながら。
そうしないと臭くなっちゃうから。

前回今回共にホルモンの処理にオゾン水殺菌を取り入れています。
オゾン水は殺菌・消臭・ぬめり除去の効果がある水です。
水道にオゾン水発生装置という機械を取り付ける事で、オゾン水を発生させる事が出来ます。
薬品を使った殺菌とは異なり、有機物にふれた瞬間に水(H₂O)に戻るという非常に優れたものなんだけど、機械が高いのが難点。(歯医者さんなんかでも取り入れられています。)
また、そうは言っても、やっぱり基本はスピードと流水によるぬめりの除去と温度管理だと思うのです。
その上にプラスアルファとしてオゾン水がある感じで処理しています。

次に向かうのは胃袋。
一番においのある消化器官です。
まず簡単なセンマイから向かいます。
センマイはなんか本のような感じ。ページを1枚1枚めくって洗っていきます。
汚れが付着しにくい場所なので、あっという間に終わります。
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次はハチノス
凸凹の中に付着する表皮を削っていきます。
ここまで取らなくてもいいんだろうけど、取り出すと止まりません。。。
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そして、前回「ひでふく」のホルモン処理で1番てこずった第1胃のミノ!!
絨毛と言って毛皮のようなヒダヒダがいっぱい生えています。
このヒダヒダから栄養を吸収すると同時に、草を分解してくれる微生物のすみかでもあります。
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ミノはこのヒダヒダの内皮と反対側の外皮を剥いでいきます。
しかし、これが難しい。
ミノの身が皮にベリベリっとくっついてきて、とても残念なことになります。
でも、今回は前回とは違います。
肉屋の店長に屠場で直接教えてもらいました。
ミノには剥く方向が色々あるらしく、「それぞれの繊維に沿って剥かないとバラバラになりますよ」と言われました。
はい。前回はバラバラになりました・・・
「外側外側の皮をむいて行くと、こんなふうに簡単に剥けるんすけどね。」とすいすい剥いていく店長。

結構簡単じゃないか??
ということで万全のシュミレーションのもと再挑戦したのでした。
すると、早い早い。
なんと1時間ほどで全て剥く事が出来ました!!!
ちなみにこのミノ、屠場のおじさんが「普通の倍近くあるわ!放牧しとるからかな?」と驚いていました。
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出来たホルモンの内訳です!!
・小腸5680g
・大腸4200g
・ハツ1866g
・レバー5568g
・タン870g
・アキレス698g
・テール1214g
・ツラミ1622g
・ミノ4800g
・センマイ3720g
・ハチノス782g
・アカセン1320g
・タチギモ
・肺
・食道

全てパックするのに2日徹夜しました・・・・


ホルモン全て真空パックしたのもつかの間、今度は枝肉のカットです。
これは僕にはとても無理なのでお肉屋さんにお願いします。
(なんと、カメラを忘れ、携帯での撮影となってしまいました・・・)
2011.11.23
脱骨の技術はいつ見ても凄いとしか言いようがないです。
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胴割をしてさっそく肉を見ます。
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右側
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左側
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立派にサシまで入ってるよ。。。

リブロース。素晴らしいです!!
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サーロインリブ側。いい感じ。
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サーロインランプ側。赤い!!(笑) これはこれであり。
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唯一の携帯電話も電池切れ、カメラを持たなかった事をこれほど後悔した日はありませんでした。。。

サーロイン、リブロース、ウチヒラは日本でのドライエージングの先駆者でもある静岡の「さの萬」さんに熟成をお願いしました。
早速骨つきで、さらしに巻いて(真空パックせずに)発送です。
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さの萬さんやドライエージングについては過去のブログで少し書かせていただいてます。
ドライエージング
ドライエージング試食会
さの萬さんに向かっています
さの萬レポート
ここらも再度、まとめようと思います。

先日佐野社長から「熟成が仕上がってきたのでカットする希望の日を教えてください」とご連絡いただきました。
そして1月24日。お肉が届いて全て試食しました~!!

以前放牧敬産牛でドライエージングをお願いした事があったのですが、発送前からその時以上の手ごたえを感じていました。
経産牛も上手かった。
今回は。。。。(牛肉編②でまとめて書きますね。)

この日はブロック肉の分割のみ。
まとめると、サーロイン、リブロース、ウチモモはさの萬さんに熟成委託。
ネック、トウガラシ(1本はゼミの先輩が買ってくれました。)、ヘレは自家用に持ち帰り。
ランプはやまけんさんが独自のルートでドライエージングして食べられるとのこと。
そして残りのお肉は後日、お肉屋さんに焼肉用、切落しなどに商品化していただく事になりました。

夢ブロック肉の内訳です。(右側・左側)
・ウデ(10.94kg 10.18kg)
・トウガラシ(1.48kg 1.54kg)
・クラシタ(10.12kg 10.30kg)
・マエバラ(9.32kg 9.80kg)
・サンカクバラ(3.02kg 2.20kg)
・外バラ(6.7kg 6.94kg)
・ササミ(1.44kg 1.34kg)
・ナカバラ(3.80kg 4.08kg)
・カイノミ(1.66kg 1.54kg)
・ヘレ(3.1kg 3.06kg)
・リブロース(8.18kg 8.88kg)〈骨付き〉
・サーロイン(8.02kg 7.80kg)〈骨付き〉
・ウチヒラ(8.88kg 8.78kg)
・マル(7.54kg 7.34kg)
・ラム(6.96kg 7.16kg)
・外平(6.74kg 6.88kg)
・スネ(7.18kg 7.18kg)
・ネック(4.28kg 4.24kg)
・ショートリブ(1.78kg 1.80kg)
・サガリ(2.6kg)
・小肉(2.36kg)

立派です!!

しかし、ここで問題が発生しました。
お肉屋さんにカット委託していた夢のお肉が分からなくなってしまったのです。
お肉屋さんには夢、みつこ、ひでふくの各ブロックが真空パックで保管されています。
それを、
・焼肉用に取れる部分は焼肉に。
・それ以外は切落しに。
・切落しでも小さい所はミンチに。
・500gの真空パックで。
・1頭1頭混ざらないように分けて。
そういった形で委託しています。

しかし、今回「ひでふく」「みつこ」「夢」のお肉が混ざってしまう事態に。
理由は(肉屋さんが)忙しかったから・・・
焼肉用に使える3頭の部位を一気に集めて商品をつくる。
残った部分でまとめて切落しをつくる。

そういったやっつけ仕事的な作業で焼肉用、切落し、ミンチ共に「夢・みつこ・ひでふく」が一緒に商品化になり、夢単体で(みつこ、ひでふくも同様に)の焼肉、切落しの販売が困難な状態になりました。
楽しみにしていただいた方に本当に申し訳ない思いでいっぱいです。

ただ、夢だけは枝肉重量が300kg近くあり、みつこ・ひでふくと言った敬産牛ではとれなかった「すき焼き用」を少しだけ取る事が出来ました。
そのため、「すき焼き用」だけはみつこ・ひでふくと一緒のパックで無く、夢単体の味を味わっていただける事になります。
すき焼き用も「赤身」と「サシの入った肉」の2種類があり、それぞれ味が異なります。
個人的には草から作られたサシが入った方が脂の甘みも楽しめて美味しいと感じました。
あ、でもでも赤身も美味しいですよ~。
HP(http://tanatiku.com)での販売を開始しましたので、よければ食べてくださいね。

また、ドライエージングして頂いたサーロイン、リブロース、ウチヒラ。
これらもパートナーの皆様に送ったのちで、かなり限定になりますが販売をさせていただきます。
楽しみにしていてください!!!

そしてどうしても言いたい事。
ひでふく、みつこも良い牛で、いい肉なんです!!
経産牛には経産の良さがあります。夢には夢の良さがあります。
夢&みつこ&ひでふくの焼肉、切落し、ミンチも美味しく召し上がっていただければ嬉しいです。

という事で次回は放牧牛肉シリーズ最後「牛肉編②」です。
お楽しみに~!!
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Top▲ | by beefcattle | 2013-01-13 11:57
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