エンドファイト中毒
今日は繁殖農家さんの削蹄まわりでした。

4軒の農家さんを周り、2軒の農家さんで輸入乾草(ライグラスストロー)によるエンドファイト中毒の疑いのある牛が見受けられました。
両農場とも同じロットのライグラスを使用しており、どちらの農場も飼養頭数の1/3ちかくの歩行がふらついており、中には途中でこけて起き上がれない牛もいました。
その中の1軒の農家さんでは昨日親牛の股を裂いてしまい廃用にしてしまったと聞きました。

自分の牛ではありませんが、残念です。。。

同時にエンドファイト中毒についてあまり知られていない事に強い危惧を感じました。

エンドファイトとは植物体内で共生している真菌や細菌の総称です。
植物がエンドファイトに感染することにより植物の天敵(病害虫)に対して摂食障害を起こさせたり産卵障害を起させたりする働きをうみます。
僕ら牛飼いから見たら逆説的な話ですが、芝生などは【エンドファイトに感染している事自体】が商品価値となっています。
その一方で種を取った後の茎(ストロー)が安価な粗飼料として日本に大量に輸出されるようになりました。(以前は焼却処分していたが法律で焼却処分が禁止されたため)
僕自身現在の肉牛の生産事情を知っているだけにこのストロー(種を取った後の牧草)利用自体に善悪を持ち込んではいません。
我が家もバリバリ使っています。

問題はエンドファイトのもう一方の側面。
エンドファイトは病害虫だけでなく、それを食べる動物にも有害な物質を産生します。
畜産に関する事例は簡単に分けると2種類です。
トールフェスクによる中毒とライグラスによる中毒。(どちらも牧草の品種の名前です)
トールフェスクによる中毒で有名なのははフェスクフットと呼ばれ、エンドファイトのエバルゴリンによる末端部の血行障害。
牛の蹄が壊疽してきます。
ライグラスは歩行異常や神経症状が出ます。

対策としては輸入乾草を使用する場合、2種類以上の草を与えてリスクを分散することしかありません。
発見のポイントは嗜好性です。
エルゴバリンやロリトレムの数値の高い草は嗜好性が著しく落ちます。
繁殖牛は90%は乾草給与ですから単一の乾草を使う場合は非常にリスクがある事を理解していなくてはいけません。
繁殖農家なら感覚で分かると思いますが、親牛が食わない草なんてよっぽど何かがおかしいんですよ。
ここで辛抱強く食べさせているとライグラスの場合はすぐに神経症状を起こします。
具体的にはは起き上がる動作がいつもよりゆっくりであったり、立ち上がった際に後脚に力がないと言った感じです。
そのまま行くと起立不能になります。
それまでの過程でも後脚に力が入らないため滑って股裂きをしたりする恐れがあります。

実はこのロットのライグラス、僕も入れていました。
でも、明らかに食いがおかしいのと1頭起き上がるのにいつもより時間がかかる牛がいたことからロリトレムの高いライグラスだと判断し、「この乾草エンドファイトが出るからすぐに持って帰ってください」と全部返品しました。

餌を変えた後、起き上がるのが遅かった牛もすぐにいつもどおりになりました。

今回の農家さんの場合、エンドファイト中毒についての知識を持ち合わせていなかったことに加え、返品ということに遠慮してしまっている雰囲気を感じました。
餌屋さんには嫌がられるかもしれませんが、絶対に返品すべきだと僕は思っています。

エンドファイト中毒自体、あまりポピュラーな物ではありません。
但馬では6年ほど前にフェスクで大発生し、多頭農家の間では話題になりました。
我が家も4頭廃用にしました。
僕の場合、預けていた牛が発症したのですが、典型的なフェスクフットの末期症状で、蹄のさやは完全に抜け、アキレス腱からの傷が裂けて足はブラブラ、傷口からは膿が出ていました。
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僕自身、この時の思いがもとで放牧牛肉を始めたという経緯があります。

だから当時の事を知っている農家は輸入乾草のリスクといった視点を持っています。
でも、思った以上にそのリスクは知られていないんだなと感じました。

こう書くと輸入乾草は危険と受け取られがちですが、何でもそんな単純なものではないです。
自分で草を作っても、堆肥を入れ過ぎると硝酸態窒素が多く含まれる乾草になり、ひどい場合は食べた牛は死にます。
放牧していたって環境が悪ければワラビ中毒で全身の臓器から点状出血が起き、死亡します。

こんなのはただの1例で、輸入だから危険とか国産だから安全とか言う話ではなく、どんなものにもリスクはあり、どんな方法・手法にもそれを行う背景があるという事です。

だから人は人。他人のやり方にどうこう言うつもりはありません。
でもその上で再度、エンドファイトについてどうしても言いたかったのでこの記事を書きました。

こんな事故で廃用になる牛が1頭でも減るようにと心から願います。
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Top▲ | by beefcattle | 2013-04-26 21:05
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