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牛の捕まえ方②
前回は牛の捕まえ方について書きました。

6mの距離の牛ならなんとかなります。

でも、放牧場でどうしても距離を縮めてくれない牛もいます。

その場合にも手があります。。。。

なだめる、馴れるまで待つ、餌でつる、狭い所に追い込む・・・・・・すべて通用しません。

ではどうするのか。

「ひたすら追う」のです。

人間に比べ牛のほうがスピードも持久力もあります。
まともにかちあっては勝てません。

しかし、生ぬるい作戦は通用しません。
ひたすら追う。

このシンプルな作戦は非常に体力と気力を削ぎますが、まさに捕獲の原点だと思っています。
相手が力尽きるまで追い続ける。


これにも先ほどの外周内周のテクニックは有効です。
人間よりも牛の運動量を多くする。
ここが技です。

(なんて、そんな関係になってる時点で技も何もないんですが・・・・)

人間より牛の運動量を多くすると書きましたが、人間が楽をするということではありません。
人間も100%
だから牛もつかまるんです。

ではどんな感じなのか、ちょっと見てみましょう。





こんなスピードで追いかけっこは続きます。

この牛さんは2時間程走り続け、ようやく歩いてくれました。。。。

こんなことは本当は無い方が良いんですけれどね。

捕まってよかったです!

(その③もお楽しみに~)
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Top▲ | by beefcattle | 2011-08-23 20:18
牛の捕まえ方①
牛の捕まえ方、それは牛との親密度や飼育環境によって様々です。

長くなりそうなので数回に分け、牛の捕まえ方から「牛」を見てみようと思います。

まずは放牧場での牛の捕まえ方。

通常放牧場では餌を与えなくてもそこに生えている草で牛たちは十分生活できます。
しかし、そのまま牛を放置していると野生化してしまう牛がいます。
こうなるとなかなか捕まりません。

そのために安否確認も兼ねて牛の好きなフスマや配合飼料を持って放牧場に行きます。
そうすることで牛との距離を適正に保てるのです。

しかし、そんな中でも人と牛との距離は様々です。

性格なんですかね。
人間と一緒です。
色んな牛がいます。

馴れた牛は自分から人間に近寄ってきて「これでもかっ!!」というくらい舐めてきます。
牛舎では近寄ってくるのに放牧場のような広大な土地に放すと距離をとる牛もいます。
何をしても全く馴れない牛もいます。。。。

こういった牛との親密度に合わせて牛たちの逃走距離がかわってきます。

逃走距離とは自分(牛)を中心とした絶対不可侵ゾーンで、0mの牛もいれば10mの牛もいます。

野生動物なんかは逃走距離すんごいですよね。
そのため野生動物を一人で追いかけて捕まえるのは不可能です。

逃走距離10mの牛でも、一人で捕まえるのは超至難の業です。

逃走距離1mの牛は少し時間をかけると馴れてくるので捕まえやすい。

微妙なのが逃走距離6mくらいの牛です。
近づけそうなんだけれど決して近づけさせない。

こういう牛は駆け引きが大事になってきます。

どんな牛でも言えることですが捕まえるコツは「ビビらせない」「焦らない」です!

では、実際に見ていきましょう。
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この牛は「よしひさ07」という牛です。
15mほど先で草を食べています。
下を向いていても実際はこちらの様子をうかがっています。
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5mまでは近づくことができました。
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ここで牛の真後ろから斜め後方へ移動します。
牛を捕まえるには頭(鼻輪)をおさえなければいけません。
間違っても尻尾を掴んじゃだめです!!(蹴られます。怯えて一気に逃走距離が広がります。)
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手を挙げているのには意味があります。
牛との距離が近づき、捕まえられそうになってから手を伸ばすとせっかくのチャンスに警戒させてしまいます。
そのため前もって手を挙げておきます。
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牛に近づくときは「ばぁよぉ~ばぁよぉ~」と優しく声をかけて近づきます。
牛は好奇心も強いので実は挙げている手を気にしています。
手が単なる「恐いもの」ではなく、「恐いんだけれど興味あるんだよな」といった気持ちにさせることが大事です。
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顔を上げていつでも逃げられる体勢になっています。
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おっ!手が気になってます!!!
ここで焦って鼻輪をグッと捕まえにいってはダメです。
牛は彼方に逃げて行ってしまいます。
グッと我慢です。
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「やっぱ恐い!」と、旋回して逃げようとします。
決して慌ててはいけません。
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真後ろに立つと逃げるのでやや斜め後ろから追いかけます。
歩くスピードは一定に。
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あくまで普通に。
焦ると牛は逃げます。
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常に視線は牛から逸らす。
「お前を狙ってるんだ!」と思わせないためです。
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逃げる牛にスピードを上げずついていくには牛の行き先を人間側が誘導しなくてはいけません。
微妙な体の動作で自然なフェイントを入れ、逃げ道を限定します。
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そして常に牛の横&内側を歩きます。
こうすることで外周を歩く牛の距離と、内側を歩く人の距離に差が出てき、牛のスピードに合わせて人がスピードを上げなくてもよくなります。
(人のスピードが上がると牛は焦る)
牛がスピードを上げると人はもっと内側を歩き、牛がスピードを落としてくると、すこしづつ外側に移動し牛に近づいていきます。

牛に「こいつだったらちょっと近づくくらいいいかな。」
ってな気持ちにさせるんです。

それをひたすら距離が近づくまで根気よくします。

そしてついに牛の体にタッチできる距離まで縮まってきます!

この時も焦らない!!
焦ってはすべてが台無しです。

100%捕まえられる!と思う所まではなかなかいかないのが実情です。
だから90%は捕まえられると思うまで粘ります。

そして残りの10%に今までためてきたパワーで焦らず素早く一気に捕獲します。


こうして6mの牛の捕獲が完了です!!!!

(②へつづく)
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Top▲ | by beefcattle | 2011-08-23 14:01
原点
牛飼いを始めた原点はきっとこの写真。

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小さい頃、お盆や正月に田舎に帰ると、祖母の近くの家の牛舎に牛を見に行くのが楽しみでした。


暗い牛舎の中で、目を凝らして、背伸びして、餌箱に乗りかかって、牛を探す・・・・・・

少頭飼いの牛舎独特の牛と野草と堆肥の入り混じった匂い・・・・・

なんとなく見える大きな影と鼻息の音・・・・・・

カンヌキ越しに感じる生き物の気配。。。。。。

あの時感じたドキドキ感や匂いは今でも忘れていない。


『子供の頃に見た本や、聞いた言葉は、心の深いところにしみ込んで、一生残る。そして、優しい気持ち、気づく力を養う。(グラフィックデザイナー 坂口たいこ氏)』

うちに遊びにくるちびっ子たちやパートナー制度の子供たち。

うちの「牛」を食べてくれた子たち。

そして自分の子供たちに、いったいどんなものを残してあげられるんだろう。
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Top▲ | by beefcattle | 2011-08-23 02:34 | 新規就農
ブランド
先日三重県の松阪市に牛飼いの仲間で視察に行きました。

松阪牛は言わずと知れた日本一の牛肉ブランド。
但馬牛はその松阪牛の素牛でもあります。

視察を終え、仲間で飲んでいるときに「ブランドとは?」と言う話になりました。

先人から引き継いだ但馬牛というブランド。
これを守っていかなくてはいけないと。

確かにその通りだと思います。
僕が今牛飼いで生活しているのは先人が残してくれた但馬牛があったからです。
新規就農だろうが後継ぎだろうがおんなじこと。
先人の基盤で飯を食べている。
「ありがたいなあ」って思います。
その上で自分にどんな価値が提供できるかなのだと思う。


ブランドとは価値を提供し続けること。


でも、○○牛とかってたくさんのブランドがあるけれど、そもそも国産牛の、和牛の、但馬牛の、○○牛の、それぞれの「価値」って何なんだろう?
それがわからないでブランドを守るって言っても、守るべきものも分からない。
つくるべきものも分からない。

僕ら繁殖農家は当然直接の購買者である肥育農家の求める牛を生産しなくてはいけません。
でも、そのほかにだって肉屋、消費者、未来の食生活・・・僕らが牛を飼っていく上で見るべき視点はたくさんあるはず。

そういった話は売り上げと関係なく見えるし、曖昧だから牛飼い同士ですることはない。

繁殖・肥育・肉屋・行政・農協・餌屋・製薬会社・共済・家畜商等々立場は色々ある。
目の前のお客も仕事内容もそれぞれ違う。
でも僕はどのラインでかかわっている人も但馬牛というブランドを守る最前線なんだと思う。
だからバラバラじゃなくってみんなで自分のブランドの意味を立場に関係なく語れるようにしたい。


僕が飼育しているのは但馬牛(たじまうし)という牛。
日本の宝だと思っています。

日本で「和牛」と呼ばれているなかで90%以上を占めるのが「黒毛和種」という品種。
その黒毛和種には大きく3つの「系統」があります。
しかし実際は3つの系統の間で全国的に交配が進められ、純粋の系統はほとんど存在しません。

そんな中、兵庫県の但馬牛は「閉鎖育種」と言って他の県の牛の血液を一切入れない改良を続けており、結果純粋種が守られています。
さらに兵庫県でも僕の住む美方郡は厳しく、郡内での閉鎖育種をしているので非常に濃い血縁を持った但馬牛の集団になっています。
全国的に同じような血統構成の中、遺伝的に特徴のある但馬牛の必要性は言うまでもありません。

この但馬牛、もともとは農耕用に用いられており、昔から但馬地域は子牛を生産する繁殖地帯でした。
そこで生まれた子牛を素牛として松阪牛や、神戸ビーフ、近江牛、飛騨牛などのブランド牛がつくられていったんです。

1991年に牛肉の自由化がスタート。
安価なアメリカ産の牛肉との差別化のため霜降りの良く入る但馬牛が重宝され全国へその血液が流れて行きました。
その結果、現在はほとんどの黒毛和種には但馬牛の血液が入りました。
まさに『但馬牛の天下』といった時代があったそうです。

今の和牛の素となる牛。
それが但馬牛です。

しかし牛の場合トキのように保護していく対象でありません。
経済動物です。
経済動物とは「求められるもの」であり続けないといけない。


牛肉自由化以降、全国で和牛の改良が進み、閉鎖育種にこだわった但馬牛は霜降りでも増体でも大きく他県の牛に差をつけられる結果となりました。
以前は全国からの購買があった但馬牛も今は購買者のほとんどが兵庫県内の肥育農家です。
これは全国的にも非常に異例なんです。

こういった背景には兵庫県のブランドである神戸ビーフが兵庫県産の但馬牛を素牛としなくてはいけないという規約があるというのもあります。
しかし、見方を変えれば他県の肥育農家にとって但馬牛は魅力のない牛ともいえます。

松阪牛も現在9800頭近くいる中で但馬牛は700頭だそうです。
肉量も取れず、霜降りの派手さのない但馬牛は飼いにくく儲かりにくいのです。

もちろん但馬牛がダメということではありません。
但馬牛は他の牛に比べ脂肪の融点が低く、美味しいという試験結果も出ています。
実際僕も他県産の牛と食べ比べて香りや味が違うと感じることがあります。

遺伝的にも日本の和牛の改良の素として必要だとも思います。

長年の歴史があっての但馬牛というブランド。
良くわかります。

でも、ブランドって単なる歴史の長さじゃないと思う。

僕の友人で一般的に単価の安いホルスタインの肉をたくさんの消費者におなかいっぱい牛肉を食べてもらいたいと、自分でブランドを立ち上げ販売している方がいます。

島根で会社を興し、異端児と言われながら放牧のみで牛乳生産している仲間もいます。

彼らに共通しているのは『何が提供できるか』を考え続けているということ。

単価の高い肉が素晴らしく、安い肉はダメだなんてことはありません。
必要とされるからそれぞれに存在意義がある。
どんな業界でも価値を提供し続けるしか生き残れない。

守ってくれるブランドなんてありません。
みんな作り続けています。

但馬牛を飼っているから
ブランドを守っている。
ブランドを作っている。
それも間違ってはいない。

でも、それ以上にブランドに守ってもらっているだけなんじゃないの。

「味のわからない消費者が増えた。」
「景気が悪いから。」
ついつい言っちゃう。
ちゃうやろ。

価値を感じないから売れないだけ。


歴史の大きさは一朝一夕では得られない。
守らねばいけないものもある
但馬牛は残すべき牛だと思う。
閉鎖育種も続けていく必要がある。

でも、肉を売って、外に出て、たくさんの方と話してきたから思う。
『何を見るのか、誰を見るのか。』ってこと
子牛の発育や血統や技術論は目的じゃないってこと。


牛肉業界は冷え冷えです。
全く笑えません。

だから今、「ブランドってなんだ?」って生産者各々が考えないといけない。
「牛肉ってどうやってつくられてるの?」って消費者が勉強しなきゃいけない。
曖昧だから風評被害になる。

せっかくの但馬牛という宝。
どう守っていくのか。
そのためにどう喜んでいただくのか。
考え続けたいと思います。
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Top▲ | by beefcattle | 2011-08-06 02:49 |
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