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放牧牛肉についての取り組み ひでふく屠畜
11月3日(木)にひでふくを、22日に夢とみつこを屠畜してきました。
今日はひでふくの話です。

我が家がと畜する屠場は、車で1時間ほどの所にある朝来食肉センターです。

兵庫県には神戸西部市場や加古川市場など大きな食肉センターがあります。
ここで神戸ビーフが認定されるわけです。
1日に捌く頭数も神戸は80頭近くと朝来の屠場とはケタ違い。
朝来は週2日。1日に10頭以下というとっても小さな昭和の香り漂う屠場なのです。

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牛が枝肉になるまで30分もかかりません。
屠畜が始まると、所狭しとお肉屋さん、屠夫さん、食肉検査所の獣医さんがいっせいに仕事をします。
僕は畜主なのですが、ここはまた別の世界。
いつも何していいのか分からずウロウロウロウロとしています。。。
(たまに放血した後を水で洗い流したり、脚にフック掛けたり、牛引っ張ったりと、何とか居場所を作ろうと模索しています)
間違いなく僕がいるだけで邪魔なのですが、大きなカメラぶら下げて隙を見ては質問し、また離れて、また質問し。。。
と繰り返していると結構楽しくて勉強になります。

屠場は8時搬入です。
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繋ぎ場にいるひでふくはおとなしくじっと立っていました。
ノッキングする場所までは5mもありません。。。


ノッキングにはこの銃を使います。
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眉間を打った「瞬間」に、牛は倒れます。
そしてすぐにナイフで放血させ、頭を落とし、つり下げて、専用の台の上に乗せ、皮をはぎ、枝肉にしていくのです。
ひでふくが枝肉になるまでは20分。あっという間です。
プロの仕事場の中では、感傷に浸る余裕もありません。
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そしてだいたい10時半ごろには全ての牛の屠畜が終わります。

ひでふくの枝肉重量は177.8kgでした。
放牧敬産牛肉の中では平均よりやや小さい方です。
一般の但馬牛の経産肥育は枝肉で280kgくらいですから100キロは小さいんですね。
当然のことながら一般の経産牛と骨の重さは変わらないので、実際に取れる肉の量は1/3くらいになってしまいます。

今回からホルモンを持って帰って自分で洗う事にしました。
屠場で牛ををさばいている隣の部屋にホルモンの洗い場があります。
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左側の壁に窓のような穴がありますね。
この壁の向こうで牛がさばかれていて、内臓はこの穴から洗い場にほり込まれます。
ここで内臓の内容物を取ったりと「荒洗い」をします。
ここでざっと荒洗いしてもらったホルモンを持って帰って洗い直しやトリミングをするのです。

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手前がツラミ(ほほ肉)、テールやタンも内臓あつかいです。

ホルモンは鮮度が命。すぐにを持って帰って家で洗わなきゃ!!。。。と思いきや、そうはいきません。
BSEの検査が終わるまでは持って帰ってはいけないのです。
家畜車にホルモンを積むわけにもいかないので、一旦家まで帰り、車の入れ替えです。

16時ごろに屠場に到着。
荒洗いされたホルモンがどどどどーん!!!
ほほ肉、タン、心臓(ハツ)、テールで1箱。
レバーで1箱。
タチギモ、肺、気管、アキレスで1箱。
腸、子宮がドロ~ン、1箱。
胃袋はどどど~んと1箱。
それぞれに分けて持って帰らないと臭いがついてしまいます。

急いで持ち帰り、まずは簡単な赤物から掃除。
ほほ肉、心臓、タン、テール、タチギモ、肺、レバー、気管、アキレス。
オゾン水で表面殺菌した後、キッチンペーパーで水けをふき取り真空パックしてすぐ冷凍です。
今回も御影のフランス地方料理MOMOKAさんが全量買い取ってくださるのでタンもそのままで真空パックです。
ここまでは意外に簡単。

残るは氷水に入った胃袋と腸。
こいつらが強敵なのです。

牛の胃袋は4つです。
1胃が一番大きく「ミノ」と呼ばれる部分。大人でも丸まったら入れるくらいの大きさ。
2胃が「ハチノス」見た目のまんま蜂の巣みたいです。
3胃が「センマイ」
4胃が「ギアラ」や「赤セン」と言われています。4胃は人間と同じ消化酵素を出す器官で、その他は食道が発達して出来た器官なんです。
と、知っていてもいざ洗うとなるとまた違ったものに見えます。。。
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(ミノとハチノスです。でかい!!)

まずは一番簡単に洗えそうなセンマイを流水でヒダの根元の汚れまで落とす感じで洗っていきます。
結構簡単に洗えます。幸先いいスタートです。

次はハチノス。
センマイよりも目が粗いので簡単に汚れが、、、落ちない!!
ひとつひとつのクレーターに黒い粒がポチポチポチポチ。
洗えども洗えども落ちるんだけどなくならない。
最後は爪で擦って1つずつ落としました。。。
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こうやって流水で洗って、仕上げにオゾン水で洗って、キッチンペーパーで水を切って、
1kgごとに小分けして、真空パックすると。。。4時間が経過!!!
「うわ~、終わんねえぞ!!」

ミノは一番大きく、また、一番臭いがきついため最後に。
赤センはヌルヌル過ぎて時間かかりそう。後回し。

次は腸へ突入。
まずは短く太い大腸から。
内側と外側を洗っていきます。
内側が糞が通る道。外側には脂肪がまいています。
外側の脂肪は旨味でもあるので適度に残す方がいい。と本には書いてあるが適度がわからない。
「これは多いよな」
なんて取っていったら脂肪全部取っちゃいました。。。。
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なんてきれいな腸だろう。

それにしても適度にって、難しい。
1個取ろうとしたらバリバリバリバリ!!!って全部取れちゃう。
僕はホルモンの脂が好きなので脂は脂で取っておいて、大腸のみをトリミング。
流水の中でまな板を斜めにして包丁で内外を削ぐように洗っていきます。
特に内側がぬめりがあるのでしっかりと。
ぷるんぷるんのホルモンを再度オゾン水で洗い、「キッチンペーパー何枚使うねん!」って思いながら水を切り、
真空パックし終わったらまた4時間経過。。。

小腸、ミノ、赤セン、強敵が待ち構えています。
もうこの時点で「ひでふく」であることは完全に頭の中にはありません。
お肉だと実感がわくのですが、これだけホルモンと向き合うと「ホルモン!!」としか思えません。
感傷に浸る暇なし。

さあ、小腸です。
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黄土色のが内側のぬめり。
長い。とにかく長い。
大腸をこなした僕は同じくらいの容積の小腸をなめていました。
しかし、小腸は薄くて細い。
同じくらいの容積でも長いので、洗えども洗えども一向に切れる気配がありません。

「今度こそは脂を少し残そう。」
そう思ったはいいのですが、脂を残すと包丁で洗いにくい!
内側のぬめりが小腸は大腸よりも多く、腸を平げて包丁で洗うんだけど
4~5cm進めば裏にある脂肪が山になって小腸がくるっとひっくり返る。
それを直してまた洗う。くるっとひっくり返る。
ひたすらこの繰り返しです。

内側のぬめりは灰汁のような感じでした。
こすって洗っていると黄色い脂が浮いてくるような、まさに灰汁。
これは削げば削いだだけちゃんと取れます。
小腸をすべて洗い終わっってオゾン水、ふき取り、カット、真空パックで、また4時間経過。。。
もうだめだ~。という事でちょっぴり小腸を持って帰ってホルモン鍋にしました。

今までホルモン煮ると灰汁が出ていたので下ゆでして捨てていたのですが、この小腸は全く灰汁が出ません!!!
「洗ったかいあったよ~。」と感激しました。

ちなみにホルモン鍋の材料を買いにスーパーに行くとオーストラリア産のホルモンが置いていました。
「おおおお~これ小腸小腸!!」とかなり興奮。
しかし、ぱっと見て内側が真っ黄色。トレイ下にたまっているドリップも黄土色。。。
「あれ?荒洗いのまんまでいいの?これが標準ならめっちゃ楽じゃねえか。」と誘惑が。。。

いやいやガンバロウ。

残すはミノです。
ミノと言えば肌色ですよね。
でも第1胃の状態では絨毛と言うヒダヒダがいっぱいついています。
このヒダヒダから栄養を吸収し、このヒダヒダが繊維を分解してくれる微生物のすみかになるのです。
とはいえ硬くて食べられません。(センマイやハチノスは食べられるのに。。。)

これもヒダヒダの内側と肌色の外側の皮をはいでいきます。
メリメリ、メリメリ、メリメリ。。。
「おおっ、調子いいじゃないか~」と思っていた矢先。

ムリムリムリムリっと皮に身がくっついてバラバラに。。。
見るも無残な事になっちゃいました。

薄いミノが形もありません。
めくれどもめくれどもバラバラに。。。
「ぐちゃぐちゃだがな~!!」
なんとか剥がれたミノを戻し、内皮をめくった後、外側の薄皮めくりに入りました。
ところが、ここでもムニムニムニムニっと薄皮にうっすいミノが張り付いてバラバラに!!!
「な・なんて難しいんだ。素人がいきなりするにはハードル高かったか??投げ出したい・・・」
と思っても仕方ないのです。やるしかないのです。
しかも商品ですからモノも良くして当たり前なのです。

1剥き1剥き慎重に慎重に剥く事2時間。。。
ようやくミノの形になり、オゾン水、ふき取り、パック、冷凍、記帳で2時間。

結局総時間で12時間以上かかってしまいました。。。。

なんにせよホルモンデビューです!!
この経験が夢とみつこのホルモンに活かされるのか???
お楽しみに~。

ひでふくについては「こちら」にもちょっこし書いていますのでご覧くださいね。

今はまだ僕は肉を切る技術がありません。
そのためパックまでお肉屋さんに委託しています。
去年まではホルモンも全て委託でした。

でも、こうやって少しづつ出来る事が増えていけたら楽しいなって思っています。
ありがとう、ひでふく。
ありがとうございますMOMOKAさん。
ありがとう。

*MOMOKAさんは神戸市にあるフランス料理屋さんです。
ひでふく・みつこのホルモンやお肉がメニューに出たら、また皆さんにお知らせさせていただきますね。

*ひでふくのお肉をご予約いただいているお客様へ
改めてお一人様事にメールいたしますが、ひでふくはまだブロック肉の状態で製品化されていない状況です。
大変遅くなりご迷惑おかけしています。
お肉屋さんの手がそろそろ空くそうなので、もうしばらくお待ちいただきたいです。
遅れた分はうしうし新聞の更新に時間を使わせていただきます!
よろしくおねがいいたします。

さあ、書く事いっぱいやる事いっぱい。
出来れば毎日更新しようと思うので見に来て下さいね。

明日は但東町で酪農の削蹄です。
子牛に餌やって、今日はもう店じまい。
また明日!おやすみなさい!!!
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Top▲ | by beefcattle | 2012-11-24 20:36
放牧牛肉についての取り組み お肉の差別化について(近畿マッチングフォーラム)
牛飼いを始めて今月で丸10年になります。
今まで本当に全国いろ~んな所でお話させていただきました。
色んな出会いがありました。
今の田中畜産をつくってくれました。

でも、ちょっと休みます。

本業でしたい事がたくさんあります。
そのため講演、発表のご依頼は今後受けない方向で行く事にしました。
前から決めていた事なので、僕にとっては今さら特別な事じゃないのですが。。。
改めてブログでのご報告です。

何かありましたら電話下さい。
遊びに来て下さい。
いっぱい話しましょう!!

と、言う事で昨日は京都で農水省と近畿中国四国農業研究センター主催の「近畿マッチングフォーラム」が開催され、放牧敬産牛肉・放牧牛肉の販売面での事例発表を20分のお時間をいただきダ―っとしゃべってきました。
このフォーラムは同会場でそのあとに行われる日本産肉研究会に繋がる流れで進められました。

【特徴のある和牛肉を消費者へ~国内の飼料資源を活用して~】というテーマで国産飼料を活かした牛肉生産についてのフォーラムです。
参加者・発表者は消費者と言うよりは研究者や生産者。
「国内飼料を活かした赤身肉を推進しようぜ!!」という方向で話せば会の空気にあったのでしょうが、実際に販売してみて違和感がいっぱいあったのでKY(空気読めない人)を重々承知で言いたい事、話させていただきました。

何故か「聞きにいきたかった!」と言ってくださる方が多かったので原稿をそのまま載せようと思います。
消費者向けの発表でないので分かりにくいかもしれませんがそのまま載せておきます。

時間のある時に読んでいただければと思います。

『平成24年度近畿マッチングフォーラム』
(特徴のある和牛肉を消費者へ~国内の飼料資源を活用して~)
平成24年11月13日~14日
1、自給飼料をめぐる最近の情勢について
     農林水産省 近畿農政局生産部 畜産課長 氏里由紀夫様
2、京都府における飼料米増産と肉用牛等生産の取り組みについて
     京都府農林水産技術センター 畜産センター研究支援部 主任研究員 佐々木敬之様
3、近江牛への飼料米給与試験について
     滋賀県畜産技術センター 近江牛生産技術担当 主任技師 北川貴志様
4、遊休農地で生産した「放牧仕上げ熟ビーフの」特徴と美味しさ
     (独)農研機構 近畿中国四国農業研究センター 主任研究員 松本和典様
5、自給飼料基盤を活用した肉用牛飼養システムの開発
     (独)農研機構 近畿中国四国農業研究センター 主任研究員 柴田昌宏様
6、「放牧敬産牛肉」生産の取り組みについて
     田中畜産 田中一馬
7、粗飼料の生産を組み入れた繁殖肥育一貫経営における近江牛生産
     木下牧場 木下その美様
総合討論 パネルディスカッション 
     コーディネーター九州大学農学部准教授 後藤貴文様
     パネラー 各講演者 京都生協 産直・地産地消担当 安達善則様
という僕以外豪華顔ぶれでした。

以下、パンフレットに書いた文章です

「放牧敬産牛肉」生産の取り組みについて
                    田中畜産 田中一馬
はじめに
田中畜産のある兵庫県美方郡は地域の90%以上が山林で、山間の谷に沿って集落が点在している地域である。この閉鎖的な環境の中で何百年も昔から牛を飼い交配し続けた結果「但馬牛」という血統と産地が形成されていった。
さらに、牛肉の自由化以降、但馬牛の持つ遺伝力の強さや脂肪交雑の入りやすさから全国的に子牛が高値で売買されるようになり、但馬では畜産業の専業化や多頭化が進んだ。
その一方で小さな耕作面積しか持たない但馬地域での多頭飼育の飼料の自給は困難であり、そのほとんどを輸入飼料に依存する経営になっているのが現状である。
田中畜産は但馬牛の繁殖農家です。平成14年に5頭の牛を導入し、現在50頭の母牛を飼育しています。新規参入者であったっため畑も機械も所持しておらず、頭数が30頭を超えた頃には飼料自給率は1割を切っていました。
そんな時、アメリカ産のフェスクストローを与えていた親牛がエンドファイト中毒(フェスクフット)になり、2割近い母牛が廃用となりました。
国産牛の最高峰に位置する但馬牛・神戸ビーフ、しかし食べているものは90%以上が輸入飼料。国産牛は外国産より安全と言っていたのですが、この出来事が食の安全とは何なんだろうと考えるきっかけになりました。
その後「食の安全=食べるものがある事」という考えにいたり、自給飼料で仕上げる牛肉「放牧敬産牛肉」の販売をスタートさせました。
2008年からは子牛から完全に草と母乳だけ(4月~11月は放牧)のグラスフェッド但馬牛の生産を試験的にスタートさせました。

成果、技術の概要
現在、HP(http://tanatiku.com)を通して放牧敬産牛肉の販売を消費者、飲食店に直接販売しています。
放牧敬産牛肉とは但馬牛の経産牛を屠畜前の半年間(4月~11月)放牧に出したお肉です。放牧場では野草だけを食べさせ、放牧場から直接屠場に搬入しています。
屠畜したお肉は、1週間ほどで解体、商品化したのち真空パックで冷凍発送しています。
肉のカットまでは地元の肉屋さんに委託しており、特別な熟成はしていません。
2008年に生まれた但馬牛のグラスフェッドは『夢』という名前の去勢牛。今年の11月に屠畜予定です。この「夢」の他に、もう1頭「元気」という但馬牛の去勢でグラスフェッドを行っています。
「夢」「元気」という牛は当牧場の【放牧牛パートナー制度(http://tanatiku.com)】と言う取り組みの一環として行っており、会員(消費者)の方と子牛からの成長記録を共有したり、毎年直接その牛と触れ合えるツアーを行ったりと、直接的な牛と人の交流を通し、より牛を身近に感じてもらいながら、お客様にお肉を届けるお肉屋さんを目指しています。
同じく経産牛にもそれぞれ名前があり、お客様に届ける際には1頭1頭の名前やその牛のエピソードを添えてお肉を届けています。
基本的に宣伝・広告は行っておらず、口コミ販売で、過去3年間リピーター率が8割を超え、販売頭数も少しずつ増えていっている所です。
今年の年間販売頭数はまだ5頭と少ないですが、その分お客様との直接のコミュニケーションを楽しむことを大切にしたいと考えています。

今後の課題
放牧である上に、和牛の中でも小さい黒毛和種。その中でも特別に小さい但馬牛。
そのため肉の総量が取れない。とれるブロックが小さく、切り落とし等の低価格帯の部位が大量に発生します。
食べ方の提案などより身近に牛肉を感じていただく情報の発信も大切だと感じています。
また、内臓も含め1頭丸ごと販売していくにはスネやソトモモ、ソトバラなどの部位をブロックで活かしてくれる飲食店さんに向けての販売が不可欠であるとも考えています。
(現在、神戸のフランス料理店で使っていただいています。)
小さな農家の、小さな肉屋なのでこの取り組みが特別業界に何かをもたらすとは思ってはいません。それよりも自分が牛と人に向き合える範囲で、無理のない頭数を丁寧に販売していくスタイル。これをどれだけつき通せるかが今後の一番の課題だと考えています。
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放牧牛「夢」どんなお肉になってくれるのか、楽しみです。

(以上、パンフレットのコピーです)

で、発表内容がこちらです

(以下、発表原稿です。実際は結構アドリブです。。。)

こんにちは、田中畜産の田中一馬と申します。
今日は「特徴のある和牛肉を消費者へ」という内容の近畿マッチングフォーラムに呼んでいただきましてありがとうございます。
今回うちで販売している放牧敬産牛肉・放牧牛肉について話してほしいとご依頼を頂きました。
特にその中でも、販売面について話してくれ。とのことでしたので、放牧敬産牛肉や放牧牛肉についての生産面でのお話は置いといて、販売していく中で自分の中で起きた気付き、やどういった所に差別化を置いているのか。
そういったお話させていただければと思います。
生産面等の話はお手元の冊子の中に、うちのHPのURLがありますので帰った際にでも見ていただければと思います。
更に細かい事はブログでつづっていますので、そちらもHPから飛べます。
見て下さるとありがたいです。

田中畜産は但馬牛の繁殖牧場です。
10年前に新規参入者として就農し、現在親牛を50頭飼育しています。
今は子牛の販売を経営の軸に、年間100日ほど削蹄師として全国を回っています。
それに加えて、2008年前からお肉の販売をスタートさせています。

我が家で販売しているお肉は放牧牛肉、放牧敬産牛肉、但馬敬産牛肉の3種類です。

今回、地域資源を生かしてという事なので放牧牛肉や放牧敬産牛肉がそれに当たると思うんですが、それに取り組むいきさつや概要はお手元の冊子にあるとおりです。

簡単にざっと言うと、放牧牛肉とは生れてから草のみで育てたお肉の事を言っています。現在「夢」と「元気」という2頭の去勢牛で試験的に生産しています。夢は今月の22日に屠畜します。
マニアックな言い方をするとグラスフェッド但馬牛50カ月齢出荷です。
一方、放牧敬産牛肉は今まで母牛として活躍していた経産牛を廃用にする際、通常8カ月ほど穀物で飼い直しされるのですが、それをせずに出荷当日まで放牧場で放牧し、草だけで仕上げたお肉の事です。

6年前輸入牧草のカビ毒で多くの牛を廃用してしまった経験から、当時の僕は輸入飼料に嫌悪感を抱いていました。
輸入飼料に依存しない地域資源を生かした牛肉生産っていうのが出来ないかなって思って、2008年から放牧を使った牛肉生産に取り組んできました。

でも、実際に始めてみると、やってみたからこそ新しく気付く点や考え方など、その都度自分の中の考え方が更新されて行きました。

最初はどんなんだったかというと、お肉販売を始めた当初はカビ毒での事故から既存の畜産業に対する不信感でいっぱいだったのです。
だから・・・
・世界中で飢えて死んでいる人がいる。
・日本の食料自給率は40%を切って先進国最下位。
・人間の食べる穀物を牛に食べさせるのは不自然。
・日本の畜産はブランド牛に例外なく輸入飼料に依存することで成り立っている。
・不健康な霜降りの牛よりも赤身の健康な牛いい。
・畜産農家もBMS12番の肉なんて胸をもって食べられない。サシはほどほどでいい。
でもサシばかり追う現実。
「矛盾ばっかりやな」
そんなことばかり考えていました。

そんな気持ちを原動力に、放牧での牛肉生産に取り組みました。

全国でプレゼンテーションをし、自分の生産する牛肉の優位性をアピールしました。
放牧をすることで脂肪燃焼効果のあるカルニチンやカルノシン、抗酸化作用のある共益リノール酸が多い牛肉になる。とか
この牛肉が普及することで日本の食料自給率を守れる。とか。
自然環境と調和した環境に適応した牛肉生産とか。
サシの入った牛と違って健康的で安全なお肉とか。
そう言って多くの支援者やお客様を集めました。
僕自身嘘を言っている気は全くありませんでした。

ただ、なんとなく違和感がありました。

ある日、1通のメールが来ました。
お肉のご注文のメールでした。
その内容は、「無理やり太らされた海外の餌で育った不健康な牛肉など口にしたくありません。田中さんの育てる自然なお肉を支持します」と言った内容でした。
僕ねこのメールを頂いて、なぜか、すごく嫌だったんです。
何か自分が間違ったことをしているんじゃないか、間違った方向に進んでいっているんとちゃうか、と思ったんです。

僕の飼っている但馬牛は700年前の文献にも名前が載っている。何百年という歳月で地域の気候風土と先人が作り続けてきたものです。
その歴史があるからこそ今、お肉が食べられるという事実がある。
今、但馬牛が飼えているという事実がある。
また、僕自身が育てた多くの愛着のある子牛達は霜降りの入った神戸ビーフや松阪牛などのお肉になっていく。
そして、そこで牛を育てている方も理念と誇りを持って牛飼いされている方々も実際に知っている。

でも、その部分にあえて向き合わず、自分の都合のいい情報ばかりを選択して提供していました。
僕はお肉を有利に販売するために「輸入に頼った既存の牛肉生産は持続的な農業の形ではではない。間違っている!放牧など自給飼料を活かした牛肉生産が正しいんだ!!」と
自分の正当性を唱えようと、販売しようと、僕は気付けば他人を業界を否定していました。
当たり前ですが否定すればするほど地域で業界で孤立します。
地域で孤立すると放牧場の確保もままならなくなってきます。

持続的な農業を目指していたはずの「放牧牛肉」が気づけば一番持続的じゃない方向に進んでいました。

この時に気付きました。
あ、俺、迷子になってるなって。
放牧だとか安全だとか健康だとか、何か正しいものがあると思いこんでいたのです。
そんなものないんです。

放牧だとか輸入飼料とかは単なる飼い方の違い。
牛の飼い方は千差万別あるって。それでいいんだって気付きました。
赤身も霜降りも同じ土俵で、どちらが善悪なんてない。
後は好き嫌いの問題でしかないんだって。
だったら自分の好きなお肉を生産しようと思いました。
それで自己満足で終わらない、「商売」をしようと思いました。

それからは、多様性を完全に受け入れて、否定する事をやめて、自分の思いにフィットした、自分が納得できるお肉を提供しようと思いなおしました。
カルニチン、共益リノール酸、健康、自然・・・そういった謳い文句にたよっていたけれど、そんなキーワードに頼ってお肉の販売をすることをやめました。
そして、僕が本心で「いいね」と思っている気持ちや感情、情報をお客さんと共有できたら、お客さんからも「いいね」って言ってもらえるはず。
そう思いました。

ご存知の方も多いと思いますが、牛には1頭1頭名前があります。
1頭1頭個性があります。
牛飼いは牛が好きですし、特に自分の家の牛には愛着があります。

BMS12でる牛が可愛くって、廃用になる親牛は可愛くない。
そんな方はおられないと思います。
少なくとも僕はそう思いません。
公的な市場に出した時の値段が違うと言うだけで我が家の牛に変わりはないのです。

だから僕は自分の家の牛を大事にしたい。
やっぱり自分の家の牛を食べたら味が違いますよ。
知っている牛だから。
目隠しの食味テストでは測れない味です。
これって思いっきり主観の話です。

でも、そんな味を、そんな思いをお客さんと共有するのがうちのお肉販売です。
当然お肉自体の味も僕は「いいね」と思っているから出します。
放牧だからこの味が出るし、但馬牛の経産だから出せる味だとも思っています。
でもさらに、それぞれの牛の事を知っているから味わいお肉は深くなると思うし、1頭ごとの個体差も面白いと感じます。
そして、自分にとっての「いいね」を集める事で、もっともっといいねって思えるものにしていきたいと意欲もわきます。
そんな僕の主観の「いいね」を詰め込んでお肉を販売しています。

僕は一生懸命牛を見てびっしりサシを入れている農家さんも知っています。
そういった農家さんは牛の体調管理には細心の注意を払っていることも知っています。
だから一概にサシ=不健康、放牧=健康とは思いません。
放牧してたって管理が悪かったら死ぬ牛はでます。
とにかく、自分の良心に問うてみて、「いいね」と思わないことは販売上有利に使えるキャッチフレーズでも使いません。
カルニチンがどうとか、共益リノール酸がどうとか、安全だとか、僕は実感がわきません。
だから僕は販売のうたい文句にはしません。

お肉の販売時にもですねA5-12とか但馬牛とか放牧とかそんなことを前面に出しません。
1頭1頭の名前が商品名です。
放牧敬産牛肉「ひでふく」とか放牧牛肉「夢」などと言って販売しています。
付属のうしうし新聞にはひでふくのエピソードも載っていますし、屠場のレポートも載っています。

今、我が家のお肉を買って下さるお客様の多くがこういった田中畜産の活動や考え方に共感して下さっているお客様です。
そこに共感いただけるからこそ、8割近いリピート率と販売頭数の増加につながっているのだと感じています。

販売をしておくにあたって大手でない私たちは差別化を図っていくことが必要だと言われます。
全くもってその通りだと思います。
僕は以前「放牧」そのものを価値として置いていました。
他にも「赤身」「和牛」「熟成」色々あると思います。
しかし、それって本当に差別化出来る価値になるんだろうか?と最近思うんです。
健康にいいと言われるカルノシン、カルニチン、共益リノール酸。
確かにそこに価値を感じる方はいるかもしれません。
生産者としては使えるネタは使いたいのが心情です。
しかし、いざ商売となるとなかなかうまくいかないのではないでしょうか。
それはなぜなんだろうと考えました。

今は異常なほど情報があふれています。
牛肉を食べるとガンになるという話もあるくらいです。
添付する情報は、よほどのものでないと付加価値にならない。そんな時代だと思っています。
よほどの物とは自分が自信を持って「いいね」と思えるものだと思います。
熟成に自信があればそこが価値になるし、機能的成分に価値があると信じているならばそこが価値になる。
でも、それらを都合よくとってつけた物は価値にならない。

だから僕はお肉の販売に関してオレイン酸だとか、機能的成分だとか、放牧だとかそんなものはグリコのおまけくらいに考えているんです。
グリコのおまけ。おまけだけでは買わないですよね。
でも、あったらうれしい。

放牧をすることで牛肉中の機能成分が上がっても、食生活、食べ方で健康状態はいくらでも変わります。
なにより、放牧牛肉は医学的に見て絶対的に健康です!!って証明されても、差別化にはならないのです。
いや正確には、そんなことが一般的な認識になってしまうと、資本をもった大手がどかっと参入してきて、価格的にも宣伝にしても提供形態にしても熟成法にしても圧倒的で僕なんて吹き飛んじゃいます。

だから、僕は、放牧、赤身、健康などの単語を価値にせず、「おまけ」にしています。
僕の差別化は自分の心の中にある「いいね」と思う基準です。

自分のいいねを集めて、自分が食べたいお肉を生産して、理解いただけるお客様に販売する。
これが誰にも真似できない差別化だと思います。
この誰にも真似できないことを「差別化」と言うのだと思います。

そしてそれを続けていく中で大切なのが客様との一人一人とのコミニケーションだと思っています。

以前、数を捌こうとして大きな取引をレストランとむすんだ事があります。
放牧、自然というキーワードを前面に出しての戦略でした。
しかし、口蹄疫が出た時に風評被害で牛肉が出ないからいらないやと言われました。
人間関係のできてないつながりなんてあっけないもんでした。
既に牛はお肉になっており、ブロックで冷凍された状態で在庫は山積み。
こんなことしていては、とても続く話ではないなと思いました。

そのことから数を捌くという発想をやめました。
放牧だけに価値を置くこともやめました。

自分のいいねを曲げずに届けて、お客さんという漠然としたものじゃなく○○ちゃんに、○○さんに、○○さんに喜んでもらえたらいい(浮かんできた実名出しちゃいました。ごめんなさい)と思うようになりました。
自然派志向のマーケットに無理に合わせた商品ではなく、田中畜産と言う牛飼いが届けたいと思うお肉を買いたいと思って下さった方に買っていただく。
シンプルですよね。

お客さんも捌く牛も数で見なくなった時、本当に心が楽になりました。
自分のいいねって思う牛を、喜んで買っていただけるお客さんがいる。
それだけで嬉しい。嬉しいから手紙を書く。
送られたお客さんも喜んでくれてお手紙が届く。
こういったやり取りの積み重ねで1頭1頭販売しているというのが正直な話です。
飲食店さんにも卸しているのですが、全く同じやり取りをしています。

だから、たとえ大手が同じ飼い方で牛肉を生産してもそれはそれなんです。
僕としては飼い方に価値を置いていないから。

もちろん食品ですから美味しくなければいけないという事は言うまでもありませんし、放牧で行うことの意義はあると今でも思っています。
ただ、販売となるとそれだけではない。いろんな要因がついてまわります。
付加価値づくりばっかりに振り回されていては、ついてくれていたお客さんがいつの間にかいなくなってしまう。

目指すのは一生お付き合いいただけるお肉屋さんです。
だからこそ自分のいいねが価値です。
そのうえで今のお客さんを通して新しいお客さんが少しずつ増えていってくれる。

そんな形を目指しています。


なんだかあやふやな表現ばかりできれいごとを並べただけのように聞こえるかもしれませんね。

最後にちょっとだけ現実的な数字を。
今お付き合いしている飲食店様は僕とお客さんの事を考えてロース、ヘレなどの使いやすい部位は買って下さいません。
田中さんのお客さんの分までとったら申し訳ないからと言って下さいます。
そしてスネや外バラなど安価で数が多く小売りでは販売しにくい場所を事情を知って使ってくれています。
不定期出荷、個体差もすべて承知の上で買って下さるという事実。
本当に助かります。
そしてもっと喜んでもらいたくなり勉強します。
レストランに卸すホルモンを洗うのだって気合が違います。
だって喜んでもらいたくってしかたないから。こんなの戦略とかじゃないですよ。

そういった良い気持ちとお金のキャッチボールの循環は、無理をしてもけして続かないと思っています。

但馬牛の放牧敬産牛肉は近畿中四国農業試験場の放牧熟ビーフのように同じ黒毛和種でも血統が違うための放牧で枝肉300kg近くもとれません。せいぜい180kg~200kgです。
リブロースでは熟ビーフ6.2kgに対し放牧敬産は2.8kgです。
同じ放牧仕上げの黒毛和種経産牛でもこれだけ違います。
それでも1頭?0万円の純利益が出ます。(ここはブログではあえて書きません。。。)

下手したら2~3万円で買いたたかれる経産牛が純利益で?0万円です。

今後はこれをどんどん増やしていく。
そういった発想がうちにとっては一番危険で、今の利益構造の対極にあると思っています。
自分の大切にする考え方を崩してお客さまに寄り添うのではなく、目先の利益に踊らされず、自分の大事にする部分を信じて、共感いただくお客様と一緒に進む。
そう考えて、現在子牛を販売し、削蹄をし、お肉を売っています。

ありがとうございます。


(以上、発表原稿)


と、しゃべってきました。
以上です!!!


報告なので感想はまたまた別で。。。
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Top▲ | by beefcattle | 2012-11-14 19:17
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