牛の命を大切にする牛飼い
僕は消費者の方から【牛の命を大切にしている牛飼い】のように言われる事がとっても多いです。
でも、僕自身そんな認識は全くありません。

そもそも牛飼いは牛で食っているので牛を大事にしないと経営は成り立ちません。
いくら工場のように効率化やコストカットに焦点をあてても、牛が見れない農家は儲けられません。
牛を見ると言うことは技術です。
どんな技術も向き合って積み重ねて身につくもので、牛を粗末にする事とは対極にあります。

そんな僕はと言えば1頭の子牛を12月の子牛市場で販売するか、自分で肥育するか、廃用にして病理解剖するか、迷ったあげく、子牛を積んで家畜保健所今向かっているという有り様です。
技術が足りない。
牛が見れない結果です。

今は牛の死でノスタルジックにはなりません。
反対に慣れちゃって無関心って訳でもありません。
受け入れるしかないので、その時その時色々な思いで受け入れているだけです。

お肉にするときもそうで、牛の屠畜日を決めるのは僕です。
僕の判断で牛の寿命は伸びたり縮んだりします。
だから僕は「命を大切にしている」という実感は無いのです。

牛のプロフィールや放牧牛肉など、色んな分かりやすくてインパクトのある手法がクローズアップされて、田中畜産が派手に見える事も綺麗に見える事もありますが、牛の命を奪っているとは思っても「大事にしている」と思ったことは無いんですよね。。。

ただただ僕は牛飼い以前に、自分が納得のいく生き方で生きようとしているだけで。
その過程で今一緒に歩いていける、お話しできる方がたくさんいること。
そこに喜びを感じますし、大事なことを大事にしたいと思う日々です。

因みに、命をいただきますという「綺麗な感動ストーリー」をつくろうと思ったことは一度もなく、美味しく食べる事が牛の供養だとも思ったこともありません。
「おいしく食べてくれてありがとう」と牛が思う訳ないし、美味しく食べれてありがとうと思うのは当然人間なわけです。
そんな当たり前すぎる話を2008年の牛肉販売時から言ってきました。

牛のストーリーをお肉に添付するのは僕が自分の牛を知ってもらいたいだけです(笑)
だから人の牛を回して、もっと放牧牛肉の数をさばこうとか(今はさばく能力がないですけど。。。)、ブランドをつくろうとかもしません。

これらの事を改めて明示して、引き続き僕らしい牛飼い&削蹄師&お肉屋さんを目指します!

よろしくお願いいたします!!!

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Top▲ | # by beefcattle | 2013-10-25 14:53 | 日記
放牧牛肉(グラスフェッド・但馬牛) 「夢」 その6(牛肉編③・完結)
【但馬牛をグラスフェッド(穀物を与えず草だけ)で育てる。】

その第1陣として『夢』という牛が2008年に生まれました。
そして4年以上の飼育期間を経て、昨年の11月に夢はお肉になりました。

夢が生まれてからの経緯を数回にわたってお届けしてきましたが、ようやく時間も出来たので完結となる『牛肉編③』を書こうと思います。
(過去記事は↓をクリックすると見る事が出来ます。)
放牧牛肉(グラスフェッド・但馬牛) 「夢」 その1
放牧牛肉(グラスフェッド・但馬牛) 「夢」 その2(誕生編)
放牧牛肉(グラスフェッド・但馬牛) 「夢」 その3(成長編)
放牧牛肉(グラスフェッド・但馬牛) 「夢」 その4(屠畜・牛肉編①)
放牧牛肉(グラスフェッド・但馬牛) 「夢」 その5(牛肉編②)

夢のお肉はお肉屋さんで他の出荷した牛と一緒に混ざってしまったので、【夢】として食べる事が出来た部位は
・トウガラシ
・ネック
・肩ロース
・ランプ
・ウチモモ(ドライエージング)
・サーロイン(ドライエージング)
・リブロース(ドライエージング)
・ランプ(半ドライエージング)
・ホルモン(タン~テールまで)
だけでした。

このうちランプの片側は農業物流コンサルタントの山本謙治さんことやまけんさんが買って下さり、ブログで書いて下さいました。(↓をクリックするとやまけんさんのブログに飛びます。タイトルからすごいです。)
田中一馬君が完全放牧で育てた純系但馬牛のランイチを、マルヨシ商事の熟成庫にて半DABにしたものを食べた。やっぱり黒毛和牛は赤身も特徴的に美味しい!サシを入れるばかりが黒毛の価値じゃ無いことをしっかり表す味だと思う。
やまけんさんのブログに載っている夢の肉もめっちゃ美味そうだけど、それ以上にやまけんさんのブログを読んで「自分の事のように嬉しい!!」と言って下さる方が多かったのも忘れられません。

トウガラシは前回のブログでも書きましたが、とにかく香ばしい!味が濃い!!
夢の部位の中でも特別に美味しい。
焼肉にして食べた時、久しぶりに「肉で感動」しました。
夢のお肉の中でも一番心に残ったお肉でした。
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ネックは筋引きしないとかなり硬かったですが、ビーフシチューにしても肉の味が全く崩れず、ビーフシチューというよりは完全に肉料理。。。
とにかく煮ても焼いても香ばしみが強く、かといって臭みや癖があるわけでもなく、素直に美味しいと思えるお肉でした。
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屠畜後すぐに食べたトウガラシとネックから、「夢」という牛は、但馬牛のポテンシャルはとにかくすごいと。
自分の牛ながらただただそう思いました。
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しばらくして肩ロースとランプをすき焼き用に商品化しました。
肩ロースはサシも入っており、トウガラシに比べると香ばしみは劣るものの、グラスフェッド特有の脂の甘みを感じました。
すき焼き用のランプは、脂身が少なく、赤身でも鉄臭くなく食べやすかったのですが、肩ロースに比べるとサシの分物足りない感じで、トウガラシと比べると香ばしみで物足りない感じ。
でも、赤身は赤身でも当然赤身主体の輸入牛肉とは全く別の味で、更には但馬牛の理想肥育の「赤身の部分」とも全く別の味です。
お肉って面白いです。

今回、HPで販売した夢のお肉はこのすき焼き用2種類だけでした。
お客様の反応も上々でした。

もちろん好みもあるので色々な御意見をいただきました。

「全然味がない」とか
「この値段ならもっと美味しい肉はあると思うけど、これはこれでまた別のジャンルだと思うし、赤身に味がある」と言った地元の牛飼いの方々からの温かいけど濁さないコメントや、

「美味しかったです!草の味の脂って言うのは分からなかったですが、嫌味がなくスッと食べられたというか、ほんと美味しかったです。」と熟成肉で全国的に有名なお肉屋さんの方からのコメントもいただきました。

ワラをいただいている地元のおじいさんからは「硬く無かったですか?」と聞くと「そんなことより、なにより味があるがな」とニヤッと笑って下さいました。
まだまだいっぱい、8割くらいのお客さまからメッセージをいただきました。

美味しさの基準は千差万別ですし、基本的にうちのお肉を買って下さるお客様自体がうちのお肉に好意的な方が多いです。
また、反応というものは主に良いものが返ってくるので(よほど悪くない限りクレームまで行かず無言で去っていってしまうので・・)僕のもとには「美味しかった!!」というお返事がいっぱい現象で、幸せいっぱいでした。

ありがとうございます。

ただ、畜主というひいき目を差し引いても、グラスフェッドという肩書を引いても、色んな方の反応を差し引いても、僕は夢という牛は美味しい牛だと思いました。
主観ですが、自信を持って美味しいと感じました。
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一方、サーロイン、リブロース、ウチモモは静岡県にある【さの萬】さんというお肉屋さんでドライエージングしていただきました。
さの萬さんは日本でのドライエージングビーフのパイオニアでもあります。
以前富士宮にあるお店に行き、その時に夢のドライエージングをお願いしていました。
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さの萬さんに行った時のブログが『こちら

そして、これがドライエージングされたウチモモ!!一面カビだらけです!!!
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このウチモモを削蹄の甥弟子で肉屋で5年修業してきたY君にトリミングしてもらいました。
カビの1mm下から真っ赤(やや黒い)な肉が現れてきます。
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部屋中にさの萬さんのドライエージング特有のナッツ臭がしてきます。

ドライエージングというのは微生物による発酵食品だと僕は思っています。
簡単に言うと日本酒みたいなもんです。

ドライエージングとは屠畜後牛肉を真空パックで保存せず、熟成庫で30日~60日以上(もっと長いものもあります)微生物の力を借りて肉のうまみを引き出す方法です。
今、ドライエージングという言葉が世の中で良く聞かれるようになってきました。
ただ、【ドライエージング=美味しい】というものではありません。これはあくまで熟成の方法。
好みもあります。
日本酒に色んな蔵があり、蔵の味があるように。
ドライエージングもそのお肉屋さんの味があります。

一方、今回すき焼き用にした肩ロースやランプ、トウガラシやネックなどはドライエージングではなく【ウェットエージング】という熟成法で熟成したお肉になります。
ウェットエージングとは牛を屠畜し枝肉にしてから、各部位に分割し、真空パックで保存させる方法です。
現在の国産牛の99%のお肉がこのウェットエージングです。
(真空パック内でも少しですが熟成はします。)

「じゃあ、ドライエージングの方がじっくり熟成するから良いじゃない。」と思っちゃいそうですが、一概にそうとも言えません。
ドライエージングは熟成に期間がかかる上に、歩留まりが悪くなります。
そのためどうしても価格が高くなってしまいます。
また、安定して一定量を流通するには真空パックは鮮度を落とさず非常に有効な方法でもあります。
なによりその牛のそのままの味が楽しめます。

今回の夢のトウガラシ・ネック・肩ロース・ランプは屠畜後1週間も枝肉で吊るさず、しかも冷凍での販売でした。
こういったウェットエージングだと良くも悪くもお肉屋さんの個性があまり出ませんが、それはそれで僕からすれば「その子特有のお肉の味」味が楽しめて楽しいのです。

さの萬さんにドライエージングしていただいた夢ももちろん美味しかったです。
さの萬さんの味が夢からします!

これはまさにお肉屋さんの技術の域で、熟成することで飼育段階から更にもう1段牛肉の可能性を広げることが出来ます。
本当に面白いです。

夢のお肉はどちらのエージングも楽しめ、本当に美味しく、楽しく、思い出深く、味わう事が出来ました。
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さの萬さんから熟成いただいたウチモモは焼肉用に、
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サーロイン、リブロースはステーキにしました。
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これらはHPにあげる間もなく即完売・・・・ありがとうございました。

このブログを書いている最中、やまけんさんが再度ブログに夢のお肉の記事を書いて下さいました。(またまたすごいタイトルで恐縮です。。。)
改めて夢とさの萬さんに感謝です。
兵庫県但馬地方の田中一馬君が放牧で育てた本物の但馬牛「夢」のドライエージングを食べる。黒毛和牛の保守本流である但馬牛の血統は、放牧で黒毛の味と香りがする!ちなみにドライエージング熟成はさの萬さんである。日本で彼にしかできない凄いことをやっている!

今、冷凍庫には夢のホルモンしか残っていません。
冬に向けホルモン鍋にしたり、テールスープを作ったりしながら後はじっくり自家消費していく予定です。

そして現在、夢に続くグラスフェッドビーフとして元気という牛が放牧場で草を食べています。
現在56ヶ月齢。但馬牛の去勢です。
来年の夏に屠畜予定です。
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僕は2008年、この夢という牛を育てるにあたり、パートナー制度という企画を立ち上げました。
牛が生まれてからお肉になるまで年会費をいただき、一緒に牛の成長を見守るという企画です。
当初は牛を育てるための運転資金と販売先の確保という現実的な側面に重きを置いていました。

しかし、このパートナーになって下さった皆様がとにかく温かかった。

牛の成長を見守るとはいうものの具体的に毎日毎日牛に変化があるわけでもない。
僕が何を提供していいのか分からなくなった時も、何も変わらず応援してくれました。
毎年飛行機に乗って会いに来て下さる方もいれば、1度も会えない中で最後まで支援して下さる方もいました。

一人でもやると決めていたけれど、一人じゃなかったから夢という牛が夢というお肉になりました。
支えて下さった方々に心から感謝いたします。

本当に、ありがとうございます!!!

僕は引き続き僕らしく「しぶとく」お肉販売を続けていきます。
楽しみにお待ちいただければ嬉しいです。

今年は放牧敬産牛【さとみ】【ふくよし】がお肉となります。
さとみは若干痩せてきちゃったかな。。。ぼちぼち割ります。
ふくよしは過去一番好評だった【ふくさと】と同じようなお肉になっている気がします。
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今から楽しみです!


最後に。

夢という牛に出会えた事に。今、心から感謝しています。

ありがとう。

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Top▲ | # by beefcattle | 2013-10-20 16:58 | 放牧牛肉
血が出るまで砥げ
久しぶりにパソコンの前に座り、インターネットをしましたが、久しぶりなのでなんか落ち着かないというか、集中できないですね。。。

僕はと言えば、6月初旬に膝の靭帯を切ってから削蹄業を休業していました。
痛みはまだありますが、お医者さんからのOKをいただき、9月からバリバリに現役復帰しています。

また、その他もろもろ水面下では動いていますが、そこら辺もおいおいブログにも書いていければと思います。

今日は削蹄のお話。

僕がしている削蹄方法は単独保定と言って、枠場を使わず人間が牛の脚を持ち、主に鉈と鎌を使って牛の蹄を整えていくやり方です。
ここで大事なのが兎にも角にも牛の保定。(牛が動かないように繋ぐ技術、足を持つ技術)
それに加えて大事な要因が道具の切れ味なんです。
これは鍛冶屋さんの時点でかなり左右されるのですが、砥ぎ方によっても切れ味は全く変わってきます。

蹄の切り方に合わせた砥ぎ方があり、兄弟弟子間であっても各々砥ぎ方は若干異なります。
昔から「女房貸しても砥石は貸すな(←すごい言葉ですね・・・)」というくらい、他人の砥石は合いませんし、砥石を貸すと狂います。

一般的には削蹄鎌は片刃なのですが、僕は削蹄の際に両刃の鎌を使います。
砥石は#1000の中仕上げ用。
#の数字が上がるほどキメの細かい刃物になりますが、削蹄で使う時は小石などが噛んでいる場合もあり、砥ぐ時間と切れ味のバランスを取ると#1000は良い砥石です。

#1000は素早く砥げて刃こぼれも少なく、現場よりの砥石だと思います。
その他に粗砥石#220も使います。

この刃物を研ぐという作業は一見簡単なようで奥が深いのです。
削蹄を始めた当初は、1つの鎌を砥ぐのに3時間も4時間もかかって、それでも切れないものでした。

つるつるの砥石であっても6時間も7時間も砥いでいると、指が擦れて血が出てきます。
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血が出るまで砥いで砥いで、やっと研いだ鎌を現場で使ってみると蹄が切れず、また考えて1から砥ぎ直す。
この繰り返しをひたすらする事で自分なりの鎌になってくるのです。
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(利き手があるので表と裏で仕上がりが違います。)

今回久しぶりに現場復帰という事もあって、砥石を新調し、今までの鎌を全て1から砥ぎ直しました。
指から滲む血を見て、何だかすごく懐かしい気持ちになりました。

写真は新しい粗砥石と使い込んだ粗砥(#220)。
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横から見ると・・
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こちらは松阪で見せていただいた両刃の削蹄鎌。
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全然砥ぎ方が違います!

僕だったらこの鎌では削蹄出来ないな~。
色んな砥ぎ方があって面白いです。

「血が出るまで砥げ」

削蹄師としてはまだまだですが、これも一つの道だと感じています。
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Top▲ | # by beefcattle | 2013-09-20 17:54 | 削蹄
ハチノス
今日は【ハチノス】のお話です。

牛には4つの胃があります。
その中でも2つ目の胃は蜂の巣に似ていることからハチノスと言われています。
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しかし、今日は牛の胃袋じゃなくって、本当のハチの巣のお話です。

牛舎のシャッターの下に「キアシナガバチ」が巣を作っていました。
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キアシナガバチはスズメバチ属のハチで、その名の通り黄色く足の長い小柄なハチです。
攻撃性は強いのでむやみに刺激してはいけません。
妻からも「早く殺虫剤でやっつけといて!!」と、要望を受けていました。
しかし、「ああ、分かった。そのうちにね~。」と言ったきりで僕はずっとその巣を放置していました。

理由はハチに刺されるのが恐いから。。。ではありません。

蜂の子が育つまで待っていただけだったのです!

蜂の子は昔から貴重なタンパク源として食べられてきました。
「えぇっ!!」とかって引かないでください。
独特の甘みがあり結構美味しいんですよ。
僕はスズメバチでも蜂の子を取るためにじっと巣を作らせて待つタイプです。

蜂の子を食べるためにはハチの巣を取らなくてはいけません。
殺虫剤なんて野暮です。
叩き落とします。
蜂は落ちた巣には執着しないので落とせば勝ち。
もちろん刺されるので落とすと同時に逃げます。

また、巣の見極めも大事です。
早すぎると数がとれないし子が小さい。
遅すぎると蜂になる。(蜂になると食べるにはちょっと量的にも味的にも物足りない。)
美味しく頂くためには見極めが重要になってきます。

今回は中々いいバランスでした!
ほら、ほとんどが蜂の子。
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中にはもちろん成虫もいます。
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でも大量です!!
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今回もそのまま食べたり、軽くあぶって食べたり、美味しく頂きました。
ごちそうさまでした~。

実はこの蜂の子を岐阜県では「ヘボ」と言って食べる習慣があるそうなんです。
蜂の世界は意外に深く、全国地蜂連合会というものがあり、その中でも東白川タカブ研究会という「ヘボ」の愛好会はかなり熱いです!!
蜂の子といえどもかなり深いマニアックな世界があります。

「ヘボ」はクロスズメバチの幼生なんですが、このクロスズメバチは知ってのとおり肉食。
色々な昆虫を主食にしています。

このヘボを飼育している牛飼いさんの牛舎には、なんとサシバエがいない。というお話を聞きました。
サシバエはイエバエと同じような大きさのハエですが、アブのように血を吸うハエです。
こいつに噛まれるととにかく痛いんです。
サシバエは牛にとって非常に大きなストレスの一因でもあります。

我が家ではサシバエ対策として、サシバエの休憩所となる牛舎周辺の草を刈る事はもとより、プルスフォグで金鳥のETB乳剤を煙霧したりしていましたが、根本的な解決にはなっていませんでした。

確かに殺虫剤も良いのですが、ハエのように世代交代が早い種はすぐに耐性ができ、効かなくなる恐れがあるためそうそう使えません。
実用的な対策としては兵庫県の試験場が開発した2mmのネットを簡易にカーテンのように牛舎に張りめぐらす方法が効果として大きいのですが、地味にコストがかかります。
メンテナンスも面倒。。。

と言う事で、「ヘボ」の飼育に挑戦しようと思います!!!!!
これなら薬剤の心配もなくハエが減り、おまけに蜂の子まで食べられる。

さすがに今シーズンは間に合わないと思いますが、今から勉強して準備しようとおもいます。
上手くいくか分かんないけど、それがまた楽しいよね。


一石二鳥となるか、こうご期待。
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Top▲ | # by beefcattle | 2013-09-03 13:13 | 動物シリーズ
削蹄の効果
牛は偶蹄類に分類され、その蹄は2つに分かれています。
細かい事言えば後ろに副蹄が2つついているので4つなんですが、どちらにせよ偶数なので偶蹄類。

この主蹄は人間で言えば中指と薬指にあたります。
なので牛は何百キロという体重を指で支えているということになります。
その蹄は環境によって千差万別に伸びます。
当然ですが伸びると体重のバランスが悪くなります。
そのために削蹄をし、牛の体重を均一に分散させてあげる必要があるのです。

そもそも何でわざわざ「指」で立っているんだ!!と思うのですが、ベタ足だと瞬発力が出ないんですよね。
つま先と指でかまえるクラウチングスタートを、オリンピックの100m競争などで見た事があると思います。
同じ原理で、外敵から身を守るために、いかに早くトップスピードに持っていけるか、それを追求した結果が「蹄」だったのでは。と個人的に思っています。

「削蹄の効果」というタイトルですが、正直中々すぐに目に見えるものではありません。
逆に、削蹄をしない事の弊害の方が分かりやすい。
今回は簡単に写真を使ってお伝えできればと思います。

削蹄と言うと「蹄を短くする」というイメージを未だに持たれている農家さんが多いです。
蹄は前と下に伸びて行きます。
つなぎ牛舎などの牛が歩かない環境下では先端は削れず、蹄の先がどんどん伸びて行きます。
コンクリートなどの蹄底が削れる環境下では蹄の裏は摩耗します。
例えばつなぎ牛舎で床にゴムマットを敷くと、牛にとっての快適性が上がりますが、蹄の先も裏も摩耗しないので舟形(バナナ型)に蹄はグングン伸びて行きます。

そんな色んな環境下で、乳牛であったり、子牛であったり、雄牛であったり、肥育牛であったり、肥育でも出荷半年前の牛であったり、とにかく色んなステージや条件でそれぞれの牛に合わせた削蹄があります。

そんな中で結構に目にするのは、「削蹄師に頼むとお金かかるし、伸びた先端だけ切って短くした」というパターンです。
一見上から見れば、長かった蹄が「短く」見えます。
しかしこれだけだと、牛にとってすごく負担が大きいんです。
先端だけとるなら切らない方がまだ良いくらい。

削蹄は「蹄を短くすること」ではなくって、「牛の負担を減らすこと」。
・・・とか言うと「知ったかぶんな!!」と兄弟子のお歴々に怒られそうですが、まあ、そう思っています。

では、実際に見てみましょう。
こちらはつなぎ牛舎での繁殖牛の前脚です。
伸びていますが、蹄の付け根に負担がかかっているのがわかります。
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これを鉈でたたき落とし、
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裏を鎌ですいていく(負面を作っていく)と
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こうなります。
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適切な負面を作る事で、体重が蹄に真っ直ぐ乗っています。
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こちらは後脚。
蹄の負面ばかり摩耗して、先端が伸びています。
体重も蹄に真っ直ぐに乗っておらず、副蹄の下あたりが伸びて牛の負担になっています。
こういう牛は結構普通にいます。
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削蹄後
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先端を短くし、蹄角度を付ける事で体重が蹄に乗りました。
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この蹄角度は乳牛のフリーバーンでは52度~54度、つなぎ牛舎では45度など、一定の指標があります。
ただ、これはあくまで指標で、削蹄中はそんなこと考えて切っていません。

今まで親方から兄弟子へと積み重なってきた牛と蹄の形が自分の中に感覚としてあって、「この牛はこんな感じの蹄」と、牛を見て頭で描いた形に近づけて行く感じです。
結果的に肥育牛は安定性を重視するので繁殖牛に比べ蹄角度は浅くなったりしていますが、あくまでそれは牛を見て蹄を切った結果。
でも、言うは易くで、その「牛を見る」という事が全然足りてないなと、いつも現場で思います。言われます。
なのでもっともっと牛を見て、牛に合わせた削蹄ができるようになりたいです。
リハビリも順調で、9月には現場に復帰できそうです。
がんばらなくては。。。


おまけ。
削蹄途中であえて蹄角度をきつくとるために負面を小さくして、蹄を立ててみました。
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これはさすがにやり過ぎ、非常に不安定です。

おまけ2。
生まれて1週間の子牛の蹄。
角度は55度くらいでした。
子牛は軽いからこれでいいんでしょうね。
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削蹄の効果、ちょっとは伝わったかな。。。。
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Top▲ | # by beefcattle | 2013-08-07 13:17 | 削蹄
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